FXと麻雀、剣道との共通点

FXと麻雀、剣道との共通点

浪人生のころ、雀荘で代打ちの見習いをしていたことがあります。いまにして思えばとんでもない浪人生なのですが、当時の経験がその後の銀行での為替ディーラー経てのFX専業トレーダーとしての独立に役立ったわけですから、世の中何が功を奏するかはわかりません。

正直、麻雀というゲームに出会ったとき、世の中にこんなに面白いゲームがあったのか、と興奮したことを覚えています。何にそれほど感動したのかというと、あの四角い卓のなかで、「ツキのやり取り」が行われることでした。その正方形の閉じられた世界のなかで、どうして強い方と弱い方が存在するのだろうか。勝敗を決するのは実力なのか、それとも運なのか。実力の拮抗した4人が戦いを繰り広げ、それでもゲームを続けていくと、必ず勝敗が決してくる、これは運ということなのか。非常に興味深く思ったことを覚えています。

雀荘のアルバイトは大学に入学するまで続けていたのですが、当時ある常連のお客様がいました。その方はフリー(一人)で来店され、空いている卓で打ち始めるわけですが、途中で負けていても最後には必ず勝たれるのです。そうなると、その方に対して俄然興味が湧いてきました。どうして毎回勝利を掴めるのか、どこが他の方と異なるのか、どうすればこの方に勝つことができるのか、と。こうして、その方の打ち方を注意して見るようになると、少しずつですが、勝負に勝つ雀士のパターンというものが分かってきました

 



まず、常にツキが付いて回っている方などいないということです。誰でもツイているときもあれば、ツイていないときあります。そして、常に強い雀士が毎回毎回の勝負に勝利しているとは限らない、という事実です。最後にはトップで上がるものの、そこに行き着くまでの局地戦では、勝ち負けを繰り返しています。それでも、最終的にはトップを取るのです。

タネを明かせば簡単なことです。この雀士は、ツイていないときは絶対に大敗しないような打ち方をしているのです。その結果、半チャンが終わったとき(ゲームが半分終了しそこまでの得点を計算するとき。一般的なルールでは、1番手は最大の、2番手はその半分のボーナスを獲得、3番手、4番手は反対にボーナスを取られてしまう)に4番手にはなりません。どれだけツイていなかったとしても、常に2番手か、悪くても3番手にいるのです。ゲームが半分終了した時点でその後「回復不能」となるようなダメージ、つまり4番手になること、を受けないようにしているのです。そして、勝てるときには容赦なく攻めていきます。その態度は徹底しており、他の3人を叩きのめすまで攻め立てるのです。

 

実は、ここが勝負の勘所です。ツキをコントロールする方法と言ってもいいでしょう。まずは、大きく負けないこと。そして、相手を打ち破れる際には、徹底的に打ち負かすことです。「少し勝ち過ぎたから少々手心を加えてあげようか」などと思おうものなら、その途端にツキは逃げていきます。そのため、仏心などは絶対に見せず、勝利できるときにはトコトン勝ちを狙っていきます。これこそが、FX(為替)や株などのトレードにも当てはまることなのです。

 

それでは、FX(為替)などの取引で失敗するのは、どういうときでしょうか。自分自身の経験を振り返ってみると、勝ち続けているときほどつまらない失敗をしでかしています。そういうときは心のどこかに「少しぐらいいいか」という油断があります。すると、もう二度とツキは戻ってきません。そこから再び勝利し続けることはできないのです。

 

麻雀で大敗しないためには、どうすればいいのでしょうか。常に場の流れを読み、相手と自分を比べるのです。「いまこの局でこの相手に立ち向かっていったとき、果たして自分は勝利できるのだろうか」、と考える。勝てないと判断したら、トコトン負けが込まないような打ち方に切り替えていく。最小限の敗北で終わらせる努力をする。失う金額を小さくしているうちにツキを呼び込むことができる。そして、自分にツキが回ってきたときに、一気呵成に攻めていく。こういう姿勢で勝負に臨んでいる雀士たちが、最後に勝利を掴んでいるというわけです。

 

私が麻雀とともに昔からやっている剣道にも、類似点があります。剣道は勝負事なので、引いてしまったらその時点で、基本的には負けです。常に勝ちにいくという気持ちを持つことが、大事なのです。だからといって、闇雲に勝負に出ても、敗れるだけです。自分の姿勢が崩れているときや、不利な状況のときに勝負を挑むと、十中八九相手の思う壺にはまってしまうからです。相手に攻められ、形が崩れてしまったときには、まずは自分自身のいい形をつくり、そのうえで勝敗を決するのが基本です。姿勢が崩れている、ツイていないときは我慢をし、まずはいい形になる。次に、ツキが回ってきたときに一気に攻める、ということです。

 

以上解説してきましたように、麻雀も、剣道も、FX(為替)などのトレードも、すべて対戦相手を意識する必要があるわけです。しかし、FX(為替)取引の場合は、麻雀や剣道とは異なり直接目の前に相手がいるわけではなく、イメージが湧きにくいのではと考えられます。ひとつの方法としては、「FX(為替)相場そのものが勝負する相手だ」、と想像してみるといいでしょう。相場がもみ合いになって乱高下しているときには、相場という相手がツイいると思えばいいのです。逆に、一本調子でトレンドがはっきりしている相場展開のときには、自分に利があると思ってガンガン攻めていくのです。

もうひとつの方法は、第3章で後述しますが、為替(FX)のマーケットに参加している投資家をイメージすることです。マーケットでトレードを行なっている投資家には、ヘッジファンドなどの投機筋もいれば、機関投資家もいます。輸出業者や輸入業者など実需関係者も参入しています。こうした投資家が、いまの相場展開をどう考え、次にどういう行動を取ってくるのかを、イメージしていくのです。

 

いずれにしても勝負の要諦は、じっと耐えることにあります。きょうの勝敗に一喜一憂するのではなく最後に勝利する、トータルでプラスにすることが大切なのです。そのためには、負けが込んでいるときは大敗しないようにじっと耐え、ツキが回復するのを待つのです。損失を回復しようと焦り、慣れないことに手を出してはいけません。一旦休んで、次のチャンスがくるのを待てばいいのです。

FX(為替)の利点は休めることだ、といえるでしょう。剣道であれば、試合の途中で休むわけにはいきません。麻雀にしても、ご自分が勝ち続けた後でツキが逃げたからといって、勝負の場から降りるわけにはまいりません。「勝ち逃げするつもりか」と責められ、友人関係を壊すのがオチでしょう。しかし、FXであれば、ご自身にツキがないと感じたときには、さっさと勝負から降りればいいのです。ご自分のお好きなときに休憩できることが、他の勝負事とは大きく異なるところです。誤解を恐れずにいえば、FX(為替取引)は、麻雀よりも勝てる確率が高い勝負事なのです。