FX(為替)に影響を与える実需(貿易取引)

FX(為替)に影響を与える実需(貿易取引)

FXの基盤となる外国為替市場では様々な分野に携わる方が、それぞれの目的のもとで取引に参加しています。たとえば、日本から海外に投資をする、あるいは海外から日本に投資をするという流れのなかで発生する為替取引があります。日本から米国に輸出した自動車の輸出代金を円に替える、あるいは中東から原油を輸入するのに必要な代金をドルに替えるという取引もあります。

前者は投機または資本取引で、後者は実需または貿易取引などともいわれます。為替(FX)取引では、圧倒的に前者の占める比率が高いのです。2016年のBIS(国際決済銀行)データによると、外国為替市場における一日当たりの取引金額が約5兆1千億ドル、このうち貿易取引が占める割合は7%程度です。それ以外はすべて資本取引に関わるものということです。したがって、相場に短期的なインパクトを与えるのは、資本取引に関わる為替取引ということになります。資本取引については後ほど詳しく説明することとして、ここではもう少し貿易取引についてみていきましょう。

貿易取引では、原油の輸入量が前年比で3倍に伸びたり、自動車の輸出台数が半減することはまずありえません。毎年の輸出量、輸入量そのものが大きく変化することがないため、それに伴う為替取引自体も比較的安定しています。貿易取引に関わる為替取引については、ほぼ「読める」と言えるでしょう。

たとえば、トヨタ自動車が米国市場に自動車を輸出したとしましょう。この貿易取引によりトヨタ自動車はドルで代金を受け取りますが、日本国内で働いている従業員の給与や下請け企業などへの支払いには円が必要となります。そのため輸出で獲得したドルを円に交換する必要が生じ、円高要因となります。またこれとは逆に、日本が海外から原油などを輸入する際には、円をドルなどの外貨に替えて買い付けを行うので、円安要因です。しかし、前述しましたように、貿易取引は多少の方向感をもちながらもそう大きくは変化しません



ところが貿易取引額は毎年それほど変化がなくとも、外国為替(FX)市場において日本の貿易黒字が円高要因として突如クローズアップされることがあります。貿易取引と資本取引が為替レートに影響をおよぼすと説明しましたが、この両者のバランスにより、貿易収支が為替(FX)市場の材料として注目を集めるときと、忘れさられているときがあるのです。

たとえばバブル期のように投資が非常に盛り上がっている際は、資本取引の金額が一気に膨れ上がっていきます。そのため相対的に貿易取引の占める比率が小さくなり、日本の貿易黒字のことなど市場参加者は誰も気にしなくなります。ところが、金融不安やテロなどの突発的な事件による地政学リスクが発生し、それが引き金となりリスクオフのムードが高まると、盛り上がっていた投資の意欲が減退します。今度は相対的に貿易取引の占める比率が高まり、貿易収支などが材料としてクローズアップされてくるのです。つまり貿易収支が市場で話題になったりならなかったりするのは、貿易収支の黒字額が大きく拡大縮小した結果ではなく、主役はあくまでも資本取引なのです。他には、ポピュリスト政治家による国内での人気取りなどの政治的な要因で貿易収支が取り上げられることもよくあります。現在話題となっている、トランプ大統領による米国の貿易赤字は不公正だという主張と米中貿易戦争は、まさにこれに当たるといえるでしょう。

基本的には、様々の投資材料があるなかで、資本取引が大きく伸びれば相対的に貿易収支への関心が薄れます。逆に材料がないときには、市場関係者が為替(FX)相場を大きく動かすための材料を必死に探す事となり、その結果相対的に大きな存在となった貿易収支が注目されるだけのことなのです。もちろん長い目で見れば、貿易収支の黒字が為替相場に影響をおよぼすこともあるでしょう。しかし、そんなに長い目で為替(FX)相場を見ている市場参加者など、ほとんどいません。為替(FX)ディーラーなど大半の参加者は目先2〜3ヶ月先の相場がどうなるのかということを念頭に置いて、取引に参加しているのです。そのためには、資本の動きがどうなるのかということが、まず注目されるのです。